前回の「ブログ26」の続きです。
遺産相続では、財産が一旦全ての相続人の共有となることから、「売却」や「遺産分割」を行うには、全ての相続人と同意を得ることが必要です。しかし一部の相続人が音信不通で連絡が取れないことが多々あり、そんな時は、いったいどうしたらいいのか? についてです。
1.相続人と連絡が取れないときの売却の流れ
相続した不動産を売却する際、ポイントとなるのが不動産の名義変更です。
相続発生時は、名義変更がなされていない不動産は、実質的に売却することができない…といいました。
相続した不動産の名義変更には、以下の3つの方法があります。
- 法定持ち分の共有名義のまま名義変更する
- 遺言書に従い名義変更をする
- 遺産分割協議書に従い名義変更する
このうち、「1. 法定持ち分の共有名義のまま名義変更する」を選択すると、連絡の取れない相続人も含めて不動産が共有となってしまいます。不動産が共有となると、売却時に連絡の取れない相続人にも売却の同意を得なければならないことから、「1.」は、
非現実的な選択肢です。そこで、相続人の一人と連絡が取れないケースでは「2.遺言書に従い名義変更をする」または、
「3.産分割協議書に従い名義変更する」による方法によって、連絡可能な相続人に名義変更を行うことが一般的です。
遺言書に従い名義変更をする場合には、名義変更の必要書類として遺言書が必要です。また、遺産分割協議書に従い名義変更するには、「遺産分割協議書」が必要書類となります。名義変更が終われば「売却」に入れます。
依頼がしやすく、相性があって応対がきちんとした不動産会社に依頼してください。
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2.遺言書を探す
ここでは、最も簡単な方法である遺言書による分割について解説します。遺言書とは、生前に被相続人(他界した人)が遺産の分割方法などを書き記した書類です。法的に有効な遺言書があれば、分割方法は遺言書の内容が優先されます。遺言書の内容を覆したい場合には、遺産分割協議書を作成することが必要です。遺産分割協議書を作成するには原則として相続人全員の同意が必要ですので、連絡の取れない相続人と連絡を取る必要性が出てきます。逆に言えば、遺言書さえあれば遺言書に従って分割すれば良いだけなので、連絡の取れない相続人を探す必要もありません。よって、まずは連絡の取れない相続人を探す前に、「遺言書を探す」ことが先決です。遺言書には、公正証書遺言と公正証書遺言以外の遺言(通称、「自筆遺言」)の2種類があります。
遺言書は、被相続人が「専門家」にアドバイスを受けながら作成するのが一般的なため、被相続人が生前に付き合いのある専門家に聞くと存在が分かること多いです。専門家が遺言書の存在を知らない場合には、念のため、最寄りの公証役場に出向き、遺言書の有無を確認します。遺言書の検索だけであれば無料です。公正証書遺言がなければ、念のため自筆遺言も探してください。自筆遺言は銀行の貸金庫にあるケースが多いです。その他、被相続人の部屋や実家といった場所にも残っていることがあります。また、自筆遺言を執行するには「家庭裁判所」の“検認”が必要です。検認の結果、残念ながら有効な遺言書でなかった場合、相続人を探すという選択肢となります。なお、遺言書に記載されていない不動産については、勝手に特定の相続人に名義変更はできません。遺言書に記載のない不動産は、被相続人(他界した人)が何も意思表示をしなかったことを意味しているため、原則に従い法定相続分による共有の状態となります。もし”遺言書に記載のない不動産”について特定の相続人に名義変更する場合には、遺産分割協議書が必要となります。
3.相続人を探す
法的に有効な遺言書がない場合には、遺産分割協議書による分割を行うことになります。遺産分割協議を成立されるには、相続人全員の同意が必要ですので、相続人を探す必要性が出てきます。連絡の取れない親族を探すには、「戸籍の附票」から現住所を探ります。戸籍の附票とは、本籍地の市町村において戸籍の原本と一緒に保管している書類です。
戸籍の附票を取得するには、“本籍のある市区町村”が窓口となります。取得費用は1通300円が一般的です。
戸籍の附票には、その戸籍が作られてから「現在に至るまでの住所(現住所)」が記録されています。
現住所が判明したら、一度会いに行くのが確実です。会いに行けば、その日に会えなくても暮らしぶりなど様々なことが分かります。表札名が当人で、郵便ポストに郵便物やチラシが溜まっていない状況であれば、そこに当人が住んでいる証拠です。
また、現住所の不動産の登記簿謄本を取得し、家の所有者かどうかも確認してみることも一つです。
不動産の所有者なら固定資産税を支払います。登記簿謄本に固定資産税の滞納による差押登記がない場合には、固定資産税を払っていることになりますので、きちんと生活しているであろうことが窺えます。
一方で、遠方で会いに行けない場合には、郵便を送って事情を伝えることから始めます。郵便は「配達証明郵便」で送れば、配達された事実が分かるため、誰かがその住所に住んでいることまでは分かります。次で紹介する「不在者財産管理人」を用いる場合、
“弁護士等が不在者財産管理人”になると不在者財産管理人の任務が終わるまで費用が請求されます。また行方不明者の法定相続分を下回るような遺産分割を行うことが出ません。不在者財産管理人の利用は費用もかかるため、連絡が取れない相続人が現住所に住んでいそうであれば、あきらめずになんとか当人を探すようにしてください。
次回は、(第三回目)不在者の財産管理人についてレポートします。